TreeLevel
日本語

理論を書く、あるいは読み込む

TreeLevel はファインマン則をひとつも暗記していません。与えられたラグランジアンから導きます。与え方はふたつ——ごく小さな言語で書いた .feyn ファイル、あるいは FeynRules が出力した UFO フォルダです。

原理

場(スピン、質量、幅、電荷、色)とパラメータを宣言し、続いて相互作用ラグランジアンを項ごとに書きます。運動項は書きません。伝播関数は宣言と選んだゲージから決まります。場を三つ以上含む項はすべて頂点になります。

V=i×∑外線 ↔ 場 の割り当て(場を取り除いた項、∂μ→−ipμ、運動量はすべて流入向き)V = i\times\sum_{\text{外線}\,\leftrightarrow\,\text{場 の割り当て}}\bigl(\text{場を取り除いた項、}\partial_\mu\to -ip_\mu\text{、運動量はすべて流入向き}\bigr)

外線を場に割り当てる場合の数の和が、組合せ因子(−λ/4! ϕ4-\lambda/4!\,\phi^4 から −iλ-i\lambda)、同種ボソンを含む頂点の対称化、そしてマヨラナ・フェルミオンや CC を含む結合における Denner の組合せ Γ+Γ′\Gamma + \Gamma' を生みます。

.feyn 言語

model QED
gauge feynman                       # feynman | unitary

param ee = 0.313451, Me = 0.000511  # パラメータ、数値は省略可
cparam V = 0.97                     # 複素パラメータ。conj(V) がその共役

field e  : dirac, mass Me, charge -1, pdg 11, label "e"
field mu : dirac, mass MMU, charge -1, pdg 13, label "μ"
field A  : vector, pdg 22, label "γ"
field Z  : vector, mass MZ, width WZ  # 幅は伝播関数に入る
field u  : dirac, mass MU, charge 2/3, color 3
field G  : vector, color 8            # 八重項:グルーオン
field N  : majorana, mass MN          # 自分自身が反粒子
field h  : scalar, mass MH
field Gp : scalar, mass MW, charge 1, goldstone

family lep = { e, mu }                # 同じ構造をもつ場のまとまり
array  Q[lep] = { -1, -1 }            # 族で添字づけしたパラメータ
define W3[mu] = cw Z[mu] + sw A[mu]   # マクロ。ダミー添字は使うたびに付け替えられる

L += sum(i in lep) ee Q[i] lep[i]~[a] gamma[nu][a,b] lep[i][b] A[nu]
L += gs u~[a,k] gamma[nu][a,b] T[c,k,l] u[b,l] G[nu,c]
L += -gs f[a,b,c] (del[mu] G[nu,a]) G[mu,b] G[nu,c]
L += -lam/24 h h h h                 # −λ/4! φ⁴ → 頂点 −iλ

構文の誤り、添字の誤り(同じ名前をスピノルにも色にも使うなど)、構造の誤り(C 行列がフェルミオン場ふたつを結んでいない)は、行番号つきで英語で「理論」タブに表示されます。

例:標準模型に Z′ を加える

  1. パレットでモデル StandardModel を選び、複製ボタンを押します。新しいモデル「StandardModel のコピー」が選択された状態になるので、SM-Zprime と改名します。
  2. 理論タブ。パラメータと場の下に次を加えます。
    param gZp = 0.3, MZp = 3000, WZp = 30
    field Zp : vector, mass MZp, width WZp, label "Z′"
    # 荷電レプトンへの普遍的なベクトル結合
    L += sum(i in lep) gZp lep[i]~[a] gamma[nu][a,b] lep[i][b] Zp[nu]
  3. 適用。Z′ がパレットに現れ、頂点の一覧が三つ増えます。
  4. e+e−→μ+μ−e^+e^-\to\mu^+\mu^- を描き、生成:図は三つ(γ,Z,Z′\gamma, Z, Z')。σ\sigma を 200 から 5 000 GeV まで対数目盛で描くと、3 TeV の共鳴はまさに指定した幅を持ちます。幅を自己無撞着にするには Z′→e+e−Z'\to e^+e^- を描き、「計算」タブで Γ\Gamma を読み、それを(× チャンネル数)WZp に入れてください。

フェルミオン数を破る結合

ダイクォーク、レプトクォーク、大統一理論の X・Y ボソン、ディラック場に対するマヨラナ項——こうした結合は「同じ向き」のふたつの場、すなわち ψ\psi ふたつ、あるいは ψˉ\bar\psi ふたつを、荷電共役行列 C=iγ2γ0C = i\gamma^2\gamma^0(CT=−CC^{T} = -C、CγμTC−1=−γμC\gamma^{\mu T}C^{-1} = -\gamma^\mu)で結びます。

# ψᵀ C Γ χ  =  ψ̄ᶜ Γ χ           (ψᶜ = C ψ̄ᵀ, ψ̄ᶜ = ψᵀ C)
L += -g5/sqrt2 d[a,k] C[a,b] gamma[mu][b,c] PL[c,d] e[d] X[mu,k]
# ψ̄ Γ C χ̄ᵀ  =  ψ̄ Γ χᶜ          (上のエルミート共役)
L += -g5/sqrt2 e~[a] gamma[mu][a,b] PL[b,c] C[c,d] d~[d,k] X~[mu,k]
# ダイクォーク:色の ε、同じ場が二度 → 規則 Γ + Γ′
L += -g5/sqrt2 eps[k,l,m] u~[a,l] gamma[mu][a,b] PL[b,c] C[c,d] u~[d,m] X[mu,k]

TreeLevel は CC を頂点規則に吸収します。規則は「行」の外線(ψ\psi または ψˉ\bar\psi)と「列」の外線のあいだの Γ\Gamma であり、共役を担うのはフェルミオン流です。Denner、Eck、Hahn、Küblbeck に従って鎖ごとに向きを定め、流れに逆らって頂点を通るときは Γ′=CΓTC−1\Gamma' = C\Gamma^{T}C^{-1}、逆向きにたどる伝播関数は S(−p)S(-p)、外線スピノル u,v,uˉ,vˉu, v, \bar u, \bar v は粒子か反粒子かではなく鎖の中での位置で決まります。結果は選んだ向きによりません。テストはこれを各過程で確認しています。

カーネルが再現し、見張り役として働くふたつの恒等式:εklm uˉlγμPLCuˉmT=εklm uˉlγμPRCuˉmT\varepsilon_{klm}\,\bar u_l\gamma^\mu P_LC\bar u_m^{T} = \varepsilon_{klm}\,\bar u_l\gamma^\mu P_RC\bar u_m^{T}(X のダイクォーク結合は両方のカイラリティに付くので Γ(X→uu)=Γ(X→e+dˉ)\Gamma(X\to uu) = \Gamma(X\to e^+\bar d))、そして軸性ダイクォーク結合 ε uˉγμγ5CuˉT\varepsilon\,\bar u\gamma^\mu\gamma^5C\bar u^{T} は、マヨラナ粒子のベクトル結合と同様に恒等的に消えます。

UFO を読み込む

UFO 形式(Universal FeynRules Output)とは、FeynRules が MadGraph や他の生成器のために出力する Python のフォルダです:particles.py、parameters.py、couplings.py、lorentz.py、vertices.py…。TreeLevel は Python を使わずこれを直接読みます。宣言的 Python 用の小さな読み取り器が内部パラメータ(cmath 関数、混合行列、複素式)を評価し、自己共役なフェルミオンをマヨラナと認識し、ローレンツ構造と色構造のそれぞれを規則に翻訳します。

  1. UFO フォルダを用意します。MadGraph のインストール(models/sm、models/MSSM_SLHA2…)から、あるいは FeynRules のモデル集から。
  2. パレット ›モデル› 📁 UFO フォルダを読み込む。読み込みは一瞬で終わり、報告に場・頂点・パラメータ、そして飛ばした頂点があればその理由が示されます。
  3. モデルはマイモデルに入り、パレット、図の生成、数値計算と記号計算にそのまま使えます。「理論」タブには読み込みメモが表示されます。

適用される規約は MadGraph の UFO sm で確定させたものです(129/129 の頂点が導出した標準模型と一致):粒子と運動量の並びはすべて外向き、Gamma(mu,i,j) =(γμ)ij= (\gamma^\mu)_{ij}(ii が ψˉ\bar\psi 側)、ProjM =PL= P_L、T(a,i,j) =(Ta)ij= (T^a)_{ij}、色の Epsilon は添字三つ。MSSM_SLHA2 は丸ごと読み込めます(場 50、パラメータ 1 572、頂点 822)。ニュートラリーノとグルイーノはマヨラナとして扱われます。

読み込んだモデルは規則をそのまま保持します。TreeLevel 上で編集できるラグランジアンは持ちません。四フェルミオン(接触)型のローレンツ構造と、UFO 中で C を含む頂点はまだ翻訳されません。読み込みメモに記載されます。

FeynRules、.fr、UFO、.feyn:それぞれの役割

ファイル中身TreeLevel での扱い
.frFeynRules の Mathematica ソース:Mathematica 記法による場、パラメータ、ラグランジアン。直接は読みません(Mathematica が要ります)。FeynRules が UFO に書き出します。
UFO フォルダすでに導出されたファインマン則。宣言的 Python。そのまま読み込みます。
.feynTreeLevel の言語:.fr と同じ中身を、より簡潔に。実行時に導出。アプリ内で編集できます。
.feyndiagTreeLevel の書類。理論 + ある過程の図。

.fr を .feyn に書き写す作業は今のところ手作業ですが、ほどほどの大きさのモデルなら一時間ほどで済むことが多いです。規約(DμD_\mu、射影演算子、規格化)は同じだからです。大きなモデルでは、推奨される道筋は依然として .fr → UFO → 読み込みです。